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…………。
………………。
男の目に女が、女の目に男が。
男の目の中に女の目が、女の目の中に男の目が。
合わせ鏡のふたり。
風呂上がり宜しく、頬を上気させた女。
月人を髣髴とさせる、精悍な顔立ちの男。
瞳の水鏡の中、逢魔が刻のふたり。
またも、互いに名を呼ぶ。
…………。
………………。
と。
頬を擦り合い、逢瀬を謳歌するふたり。
………………。
…………。
その男の名は。
その女の名は。
第03話 依願新人(いがんにーと)
「…知るかよ」
…………………は?何言ってんだ、俺。寝返り打って時計を見ると昼の12時過ぎ。大体の局がバラエティだの毒
舌コメンテーター付きのワイドショーばっか流してる頃だ。ま、さっきのは寝言だったってことにしとくか。
俺は流哉。…あ?流哉じゃねえって、とっくによ。仕切り直しますよ、はいはい。
俺は城辰巳(じょう・たつみ)。ま、何をしてたかはお察しの通り。去年の大晦日付けで辞めてやって、今は奔放な
俺を生業にしてるってことでいいんだろうけど。ま、言い直せばいわゆる依願退職でニートってわけだが。以上、俺紹 介終わり。…って、誰に紹介してんだか。ま、いいか。
「…あー、眠っ」
『俺が欠伸した』って、書かなくてもアレだろ…ってか書いてるし。ま、いいか。眠いもんは眠い。痒いもんは痒い。
新年、俺の髪を変えてからというものどうも汚れやすいっつうか。ま、眠いもんの方がアレってことで寝る。
右に向いて転がれば、壁のコルクボードに往時の俺がベタベタ張り付いている。女装癖はねえが、長髪の俺なら出
来てたかも判らねえな。……夜に飽きたっつうか、夜を俺のもんにしてえっつうか。ま、これだけありゃ年金は安泰だ しよ(笑)
「…おし」
腹減ったから買出しに行くか。それとも、どっかで適当に外食しとくか…ま、気分次第で。…で、誰だったんだか。そ
いつらは。
…………。
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