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第07話 勇断凛戦
(ゆうだんりんせん)
…………。あれから何分、何十分見合ってるやら。お見合いと違う見合いを、飽きもせず続けている。見るに見か
ねて(?)、俺が欠伸しようとした時か。
「…てああああああああああああっ!」
バスターミナル前で構えていた、前方のミイラ大将目がけ忍者が飛び掛かる!のを図星だとミイラ大将は思ったら
しく、横に飛び退いた。左足を軸に忍者が方向転換する所を狙い、下っ端ミイラが羽交い絞めにしようと飛び掛ってき た。
「…っ!」
転換するついでに、忍者は右にいたミイラを回し蹴りで蹴り倒す。強かに頭を打ちつけて動けなかったそいつが起き
上がった時には、とっくに相手にされていなかった。
「…何と性質(たち)の悪い」
忍者が一文字十文字斬り結ぼうとも、大将は旗揚げゲームの要領よろしく(?)右に左にと避けていく。んなもんだ
から、歯痒さを感じても仕方はなさそうだが。同時に、蹴り倒されたそいつも同じ思いでいるんだろうけど。
「たああああああっ!」
狙いを定め、居合抜きの要領で忍者も渾身の一撃を決める!かに思われたその時。
「――――――くあっ!」
………忍者も、たまたま運が悪かったらしい。蹴られたミイラ忍者も、たまたま運が良かったらしい。針を放ったの
は、蔑ろにされたそいつだった。忍者のインナースーツを破り、右の太腿に針が打たれている。思わず、忍者は右膝 から頽折れざるを得なかった。
「…う、うそっ!」
「……じゃ、なさそう………だな」
そんなこと……お兄ちゃんが言ってること、判るけどっ………でもでもっ!
「……………おのれ!」
由衣の否認もむなしく、ミイラの大将は敗者を担ぎ上げ…………はるか遠くに背負い投げて、強制退場させた。う
わあああっ――――なんて叫び声が、何となく聞こえていた気も。皆、誰しもが自我を忘れた実況担当者だったんだ か。本能に任せて、各々ミイラに敗者の忍者にと目がバラバラに向けられていた。
「…あっ!」
「おい、どうし―――!?」
…と、辰巳さんが言い切る間もなくその影は―――
「…きゃあっ!」
幸い、わたくし達にぶつかることはありませんでしたが………後部座席のドア目がけてぶつかり、荒波に揉まれる
かのごとく車体が揺り動いたのでした。慄きと戸惑いもありましたが、それでもわたくしは恐る恐るその主を覗きま す。
「たっ、辰巳さん!」
「ああ、判ってる判ってる!こっちだって言ってやる権利ぐれえあるぜ!」
「…え、えっ?」
降りようとしたわたくしより先に、怨恨の情を露わにし辰巳さんが飛び出ていかれました。甲冑を召された忍者の方
(?)とまみえたわたくしの物驚よりも、物損への瞋恚を燃やされていらっしゃったのでしょうか。何気なく気後れしつ つも、わたくしも車を降りました。
「あっ!」
「お、おい、由衣!?マジっすか?!」
…判んない。私も判んなかったけど、頭より先に身体が動いてた。確かに、おかしいかもしれないけど。今の状況、
なんて説明したらいいか判んないし、誰にもうまく言えそうにないし。
でも……でもっ、放っておけないよ。あんなに怪我してるのに、知らないふりなんて出来なかった。だから、私でも知
らないうちに忍者の人の所に走っていってた。私に引きずられるようにして、お兄ちゃんも私を追いかけていた。
「…やはり、お一人では荷が重すぎたようですな」
「て言ってる場合か馬鹿っ!救出だ救出だ!」
「…承知致しました」
トレーラーで静観してた関係者おふたりさんも、救出活動すべく素っ飛んでいった。由衣や俺よりは、おそらく遅れる
んだろうが。
さてさて、どうしてくれようか。昼はお嬢様だったから微妙にバリアくせえのに阻まれてたが、今度は特撮忍者だか
ら遠慮はいらねえよな。よくもまあ、見事ドアへこましてくれやがってよ。
「辰巳さん、おやめ下さい!ご覧になれば―――」
「バーカ、当てやがって黙ってられるかっつうの。過失はどう見てもそっちだぜ?正々堂々損―――!?」
…出し抜けに、ぜえとかはあとかって息切れが俺等に聴こえてきやがった。胸倉を掴もうとした腕を下ろして、渋々
そっちを向いてやると。
…走ること30分。僅か30分で、大通公園の前に到着するとは。警察車両と遭遇しなかったことは、悪運が強かった
といえよう。交通渋滞のため、これ以上進むことは適わないようであった。
「行け、甲。走りゃ何とかなるだろうよ」
「すまない」
助手席から飛び出し、条里制の街を走り抜ける。実に端的に、禍心への道は示されていた。傍観するかのごとく、
駅前のタワービルは災禍と無縁の佇まいを見せていた。
「だ、駄目です!その人怪我してるんですからっ!」
「…は?何だ、おめえら」
…っていうか、何で部外者どもがこっちに来やがったんだか。余計こじれるからどっか行けっての、早く。
「仰る通りです、辰巳さん。このまま放っておいては、見殺しにしてしまうのと同じです。早く、何か手当てを致しまし
ょう」
「了解。じゃ、脈拍測ってみるか。由衣、声かけ続けてやれ」
「うんっ!」
気を失ったままの忍者を仰向けに寝かせてやり、不良ホスト(と俺が勝手に命名しただけだが)を放っておいて俺等
は特務に精を出し始める。さっきまでは自我がないだのって言ってた俺だが、案外そうでもない気がしてきた。さて、 どうしようか。甲冑だかなんだか外せないとしたら…まあ、やるしかないな。
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